監督が求めることと自分のやりたいこと。アントラーズで抜擢され、干された監督との付き合い方
岩政大樹が書き下ろす選手と監督の距離感
「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」
セレーゾ監督は気難しいところがある監督でした。若手には特に厳しく、その分、期待もかけていました。僕はそれを手助けしたいと考え、若いときに薫陶を受けた経験から、セレーゾ監督との接し方を様々な伝え方で若い選手たちにアドバイスしていました。しかし、日本語を分からないセレーゾ監督は次第に僕に対して疑心暗鬼になっているようでした。冗談ぽく笑いながらでしたが、「ダイキの言うとおりにしていたら試合に使わないぞ」と若い選手たちに言うようになりました。僕はそれを笑顔で突っ込みながら、セレーゾ監督の目の奥に潜む危険な匂いを感じていました。
問題はここでも「それまで続けてきた僕のやり方」という僕の振る舞いだったのでしょう。僕はその頃、このコラムでも何度か触れてきましたが、若い選手をあらゆることでサポートすることを自分のスタイルとして考えるようになっていました。
しかし、セレーゾ監督はいち選手にそんなことは求めていない。もしくは、いち選手がそんなことをすることが理解できなかったのではないかと思います。僕らは言い争うことは一度もありませんでしたが、何か通じ合わないものを感じていました。
最終的にはチームが連敗をしたタイミングでスタメンを外され、そこからチームが何度負けてもスタメンのチャンスは巡ってきませんでした。